若菜 その二八一

「帝の意向よりも女三の宮さま自身が冷淡だとお恨みになることのほうが可哀そうでしょう。女三の宮様はお気になさらなくても、何かと悪しざまに告げ口する女房たちがかならずいることでしょうから私もとても辛うございます」



 など言う。



「なるほど、私が誰よりも愛しているあなたにはうるさい親戚がないかわり、あなた自身が何かにつけて気の付く人ですね。あれやこれやと周りの女房たちの思惑にまで気をまわして女三の宮のことを思いやっていられるのが私はただ国王の機嫌を損じないかとばかり気にしているようでは、女三の宮の愛情が浅いと言われても当然ですね」



 と微笑んで言い紛らわす。女三の宮のところに行く件については、



「そのうちあなたと一緒に六条の院に帰ってから。まあここでゆっくりいよう」



 とだけ言うのだった。

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