若菜 その二五三

 女二の宮もこうした柏木のそぶりのいかにも不興気な様子を見馴れてはいるものの、本当の事情はわからないままにあまり自分をないがしろにした心外な扱いを受けることに口惜しく憂鬱な気持ちなのだった。


 女房たちは皆祭り見物に出かけてしまって邸内は人影も少なく、物静かなのでぼんやりと物思いにふけりながら筝の琴をやさしい音色で弾くともなく弾いている女二の宮の様子はさすが内親王だけに気品が具わり、優雅でいるが、柏木は、



「どうせ同じことならあちらの女三の宮をいただきたかったのに、今一つ自分の運が足りなかったのだ」



 とまだ悔やんでいる。




 もろかづら落葉を何にひろひけむ

 名はむつましきかざしなれども




 と手すさびに書き流しているのは女二の宮にずいぶん失礼な陰口だった。

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