若菜 その二三七

 さて、そういえばあの柏木の衛門の督は中納言に昇進した。今の帝の信任がとても厚く、今を時めく人だった。自分の信望が増すにつれて、女三の宮への失恋の嘆かわしさを思い悩んでたまらなくなり、女三の宮の姉君の女二の宮を北の方にした。人柄も普通の人と比べるとその様子は何となくはるかに上品であるのだが、はじめに恋して心に沁み込んでしまった女三の宮への想いがやはり深かったので、どうしても心が満たされないのだった。ただ人目に怪しまれない程度に北の方として重んじていた。

 そうなってもやはり女三の宮への秘めた恋心は忘れることができない。小侍従という相談相手の女房はもともと女三の宮の侍従の乳母の娘で、その乳母の義姉がまたこの柏木の乳母だったので、柏木は早くから女三の宮の噂を身近に聞いていた。まだ女三の宮の幼少のころからとても美しいことや父の帝がとりわけ寵愛している様子などを聞いていたので、こうした恋心も抱くようになったのだった。

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