若菜 その二三四
そのうちにも紫の上はとても弱弱しくなり、もう望みがもてないほど衰弱しきって今にも死ぬかと思われるような時が多くなった。
光源氏はどうしたものかと思い乱れて女三の宮のほうへはほんの少しも訪ねない。お琴などもすっかり興ざめしてみんな取り片づけてしまった。六条の院の人々は誰もみなこぞって二条の院に移り、六条の院はまるで火が消えたようでただ女君たちが残っているだけで、これまでの華やかさはただもう紫の上一人の威勢で生まれていたのだと今更のように思う。
明石の女御も二条の院に来て光源氏と一緒に紫の上の看病をする。紫の上は、
「懐妊中でいらっしゃるのに、物の怪などに憑かれたら恐ろしいことです。早く宮中にお引き取りください」
と苦しい気分の中からもしっかり言う。連れてきた若宮がとても可愛らしいのを見て、激しく泣くのだった。
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