若菜 その二三〇
紫の上はいつものように光源氏が留守の夜は遅くまで起きていたり、女房たちに物語などを読ませて聞く。
「こうして世間によくある例としていろいろかき集めた昔の物語にも浮気な男、女に目のない男、不実な二心ある男などに関わり合った女などこんな話をたくさん書いてあるけれど、結局は最後に頼れる男が現われて落ち着くものらしいのに、私はなぜか寄る辺もない浮草のように過ごしてきてしまった。確かに光源氏が言ったように人並みよりすぐれた幸運にも恵まれた身の上だけれど、他の女ならとても耐えがたく、満たされることのない悩みにつきまとわれて生涯を終わるのだろうか。何と情けなく味気ないことか」
などと悩み続け、夜もすっかり更けてからようやく寝た。その未明から胸が痛くなって苦しみだす。
女房たちが介抱するのに困り切って、
「光源氏様にお知らせしよう」
と紫の上に言うが、
「そんなことはしないように」
と止めてたまらない苦痛をこらえながら朝を迎えた。体は火照って気分もひどく悪いのに、光源氏がなかなか帰らない間、これこれと知られることもできなかった。
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