若菜 その二二八

「明石の女御のお世話役の明石の君はさほどの身分ではないとはじめは軽く見て気楽な相手だと思っていたのに、今では心の奥底が知れず、義理もなく深い嗜みのある人のように思われます。うわべは従順でおっとりしているように見えながら心を許さない芯の強さをうちに隠していて、何とはなく気のおけるところがある人です」



 と言うと、紫の上は、



「他の方とはお会いしたことがないのでわかりませんけど、明石の君は改まってではなくても自然様子を目にする折もありますので、とても打ち解けにくくて気恥ずかしくなるようなお楽しみの深さがよくわかります。私のたとえようもない開けっぱなしの態度をあの人がどうご覧になっていらっしゃることかと恥ずかしいのですが、明石の女御は私のことをよくわかってくださっていて、大目に見て許してくださるだろうと思っています」



 と言うのだった。

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