若菜 その二一三

「それほどたいした腕とも思わないけれど、ことさらにずいぶん立派にほめてくれるものだね」



 と光源氏は得意気ににこやかな表情で、



「確かにまず悪くない弟子たちですよ。特に琵琶は私が差し出口するまでもない技量だけれど、やはり私の影響からか何となくどこか感じが違ってきているようだ。明石の浦のような思いがけない土地で初めて聞いたときはめったにないすばらしい音色だと感心したものだが、あの頃よりはまた格段に上たちしているからね」



 と何度も強いて自分の手柄のように自慢するので、女房などはそっと突きあってくすくす笑っているのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る