若菜 その一七〇
この式部卿の宮の声望は並々ならぬものがあり、帝も伯父にあたるこの宮をこの上なく信頼していて、式部卿の宮がこれはといって奏上することは断れず、気の毒なほど気を遣っている。大体において、何かと当世風な派手好みな人で、光源氏と太政大臣の次にはこの式部卿の宮の邸に人々も多く来て、世間の人々も重々しくあがめて仕えている。
髭黒の大将もゆくゆくは東宮の伯父として国家の柱石となる候補者なので、どちらにしても真木柱の姫君の評判の悪いはずがあるだろうか。折に触れて求婚してくる人々は多いが、式部卿の宮は誰とも決めていない。
柏木をもし向こうからその意向を見せたらと思っているようだが、猫より真木柱の姫君を下に思っているのか、まったく求婚の気配もないのは残念なことだった。
母君はどうしてか、今もまだ物の怪のため正常ではなく、滅入り込んでいるのを真木柱は情けなく思い、かえって継母の玉鬘の君に心惹かれているという、現代的な明るい性質なのだった。
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