若菜 その一六九
髭黒の大将の北の方玉鬘の君は、実の兄弟の太政大臣の子息たちよりも夕霧の方をやはり今も昔通りに親しく思っている。玉鬘は生まれつき才気があり、親しみやすい人で、夕霧と会うときもいつも心こまやかに他人行儀でなくおもてなす。夕霧も実の妹の明石の女御などが妙によそよそしく、あまりにも近づきにくい態度なのを侵害に思って、玉鬘とはかえって実の姉弟であるようなないような一風変わった仲の良さで付き合っている。
髭黒の大将のほうは、今ではなおさら昔の北の方とはすっかり切れてしまって、この玉鬘だけを並ぶものなく大切にしている。玉鬘には男の子しか生まれなかったのが寂しいので、あの真木柱の姫君を引き取って大切に世話したいと思っているが、祖父の式部卿の宮などがどうしても許さず、
「せめてこの姫君だけでも、世間のもの笑いにならぬように育ててみたい」
と考え、口にもしているのだった。
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