若菜 その一二五

 明石の君もひどく泣きむせび、



「人より優れた将来の幸運など私は考えていません。日陰者の身にはどうせ何かにつけ表立って晴れがましい生き甲斐などあるはずもないのですから、こんな悲しい生き別れ状態で父上の生死の消息もわからないままになってしまうのかと思うとそれだけが残念でなりません。何もかもそうなるような父上の宿縁のせいと思いますが、そんなふうに山奥に入っておしまいになれば無常な世ですもの、そのままお亡くなりになってしまったらどうしようもないではありませんか」



 と言って夜通し悲しいことをあれこそ話し続け、夜を明かした。



「昨日も明石の女御のお側にいる私を光源氏様が見ていらっしゃったのに、急にこちらへ隠れたように消えてしまっては軽率な振舞いと思われるでしょう。私一人だけのことなら何の遠慮もいらないのです。でもああして若宮に付き従っていらっしゃる明石の女御のためを思いますと不都合があっては気の毒なので、気ままに振舞うわけにもまいしません」



 と言って、明石の君は未明に帰って行くのだった。

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