若菜 その一〇九
明石の女御がとてもしんみりと物思いに沈んでいるところに、明石の君が来た。日中の加持であちらこちらから験者たちが集まってきて、騒々しく声をからして祈祷しているので、明石の女御の前には女房たちもひかえていない。尼君はそれでいい気になって、ずいぶん側まで近づく。
「まあみっともない。低い几帳でも引き寄せて姿を隠しておいでになればいいのに、風などがひどくてつい几帳のほころびの間から見えることがあるかもしれないのに。まるで医者が何かのようにお側近くに寄り添って、本当にお年をとりすぎましたわね」
などと言って、明石の君ははらはらしている。
尼君は自分ではけっこう気取って振舞っているらしいが、老い呆けてしまって耳もよく聞こえないので、
「ああ」
と言って、小首をかしげるのだった。
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