若菜 その一〇八
明石の女御はまた、心の中では、
「自分はほんとうは大きな顔をして女御の位になど上れる身分ではなかったのに、紫の上の養育のおかげで磨かれて、人並み以上になり、世間の人々からもそうつまらぬ者とは思われなくなったのだ。それなのに自分をまたとない高貴な者のように思いこんで、入内してからも傍らの女御や更衣たちを蔑ろに思い、この上なく思いあがっていたことよ。世間の人々は陰で何と噂していたことだろう」
など、今はすっかり事情もわかってしまった。明石の君のことを、もともとこのように少し劣った家柄の出であることは知っていたものの、自分が生まれた時のことなどは、そんな都に遠い片田舎であったなどとは知らなかったのだった。あまりにおっとりした育ちのせいだろうか。それにしてもずいぶん奇妙なぼんやりした話だ。
あの明石の入道が今は仙人のようにすっかり世離れした暮らしをしていると聞いたのも、いたわしいなど思い、あれこれ悩んでいるのだった。
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