若菜 その一〇二

 主人側の光源氏は、相変わらずどこまでも若いころの光源氏のように見受けられた。


 屏風四帖に帝が自分で染筆した。その唐の薄萌黄色の綾絹に描かれた下絵の模様などとても優れている。


 風雅な四季の景色の彩色画などよりもこの屏風の文字の墨色が輝くばかりに見事なのには目もくらむばかりで、それが宸筆と思うだけにいっそうすばらしく感じられた。


 置物の厨子や弦楽器、管楽器などは宮中の蔵人所から持ってきた。


 夕霧の威勢も非常に盛大になったので、それも加わって今日の儀式は格別立派なものだった。


 御賀の祝いに帝からもらった馬四十疋を左右の馬寮や六衛府の官人らが上位の者から下位の者へと次々に庭上に引き並べる頃には、日が暮れて果ててしまった。


 いつものように万歳楽や賀王恩などという舞楽が祝儀として形ばかり舞われ、今日は和琴の名手の太政大臣が臨席なので、久しぶりに一段と興を添えた音楽の遊びのほうに、誰もが皆熱中するのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る