若菜 その九十九

 秋好む中宮が住まいの西南の町の寝殿の式場として、これまでの御賀の儀式とあまり変わったことはなく、上達部の禄などは正月二日の宮中での大饗に準じて行った。親王たちには特別に女の装束を非参議の四位や大夫など並の殿上人には白い細長を一襲、巻絹などまで次々に与えた。


 光源氏に贈られた衣装はこの上もなく善美を尽くしたもので、世に名高い石帯や太刀などhあ秋好む中宮の父前の東宮の遺品として伝えられてきたものだったので、ひとしお感慨深いものがある。


 昔から天下に一つしかないといわれた名宝ばかりが皆ここに集まってくるめでたい御賀のようだった。昔物語にも進物を数々をさも重大そうに、詳細に並べて書いてあるようだが、まったく煩わしいことだし、ましたこちらのような高貴な人々の交際の仰々しい贈り物の数々などはとても数え切れるものではなかったのだった。

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