若菜 その九十七
亡き藤壺の尼宮がいた時なら、こうした御賀は必ず自分が率先して務めていたことだろうに、何一つとして自分の深い心のたけを見せることもできなかったとただもういつまで経っても口惜しく残念に思う。
冷泉帝も亡き母のもはやこの世にいないことを何かにつけても張り合いがなく物足りなく感じている。この光源氏に対してだけでも本当の父親として、世間の作法通りに父子の礼を尽くしたいのに、それができないことをいつも不満に思っているので、今年こそはこの四十の御賀にかこつけて、六条の院への行幸なども計画していたが、光源氏は、
「世間の迷惑になるようなことは決してしないように」
と度々辞退するように言うので、残念ながら取りやめになったのだった。
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