若菜 その九十四

 挿頭の花を載せる台は沈の香木の華足で、その挿頭は黄金の鳥が銀の枝にとまっている趣向だった。これは明石の女御の受け持ちで、明石の君が作らせたもので、格別に深い味わいの意匠だった。


 椅子の後ろに立ててある屏風四帖は、紫の上の父宮、式部卿の宮が作らせた。ありふれた四季の絵だが、とても凝っていて、珍しい山水や淵などの景色が目新しく風情がある。


 北の壁に沿って置物を載せる厨子二揃いを置いて、飾りの調度類が決まったしきたり通りに載せてある。


 南の廂の間には、上達部、左右の大臣、式部卿の宮をはじめ、ましてそれ以下の人々は参上しない人はいない。庭の舞台の左右に、楽人の控える仮屋を幔幕を張って造り、庭の東と西には弁当は八十人分、祝儀用の品の入った唐櫃は四十ずつ続けて並べてあるのだった。

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