若菜 その九十二
十月には、紫の上が光源氏の四十の御賀のために嵯峨野の御堂で薬師仏の供養をした。大がかりな法会は光源氏が固く止めるので、万事内輪にと控えめに計画する。薬師仏、経典を入れる箱、経巻を包む竹の簀などの立派さはまるで極楽もこういうものかと想像する。
最勝王経、金剛般若経、寿命経などがあげられて、とても盛大な祈願の法会だった。上達部たちとても大勢参列した。御堂の当たりの風景は言いようもなく美しく、紅葉の蔭をたどって行く嵯峨野の野辺をはじめとして、すべて今が見ごろなので、半分はその景色に惹かれて人々が競って集まるのだろう。はるばると霜枯れた野原一帯に、馬や車の行き交う音がしきりに響く。
誦経の布施を六条の女君たちは我も我もと立派にしたのだった。
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