若菜 その六十三
昔のことをあれこれと思い出しながら、紫の上がなかなか機嫌を直さないのを怨んで、とうとうその日は二人で過ごした。光源氏は女三の宮のいる寝殿のほうへは出かけず、そちらへは手紙を出した。
「今朝の雪に気分が悪くなりまして、とても苦しいものですから、気楽なところで養生しております」
と書かれていた。女三の宮の乳母は、
「そのように女三の宮に申し上げました」
とだけ、口上で使いに返事をさせた。
「およそ風情のない素っ気ない返事だな」
と思う。朱雀院の耳に入ったら気の毒なので、新婚のここしばらくの間は、何とか取り繕おうと思うのだが、それさえできないので、
「やはり思った通りだった。ああ、困ったことになった」
と、自身でも思い悩んでいる。紫の上も、
「私の立場も考えてくださらないで、お察しのないお方だこと」
と迷惑がっているのだった。
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