若菜 その六十四
次の朝は今までのようにこちらで目覚めてから、女三の宮に手紙を送る。女三の宮は特に心遣いをするまでもない幼い様子の人だが、一応筆などもよく選んで、白い紙に、
中道に隔つるほどはなけれども
心乱るる今朝のあは雪
と書いた手紙を白い梅の枝につけて届けた。
文使いを呼び寄せて、
「西の渡り廊下からさし上げなさい」
と命じ、そのまま外を眺めながら縁に近いところにいる。白い着物を着て、白梅の花をまさぐりながらほのかな残雪の上に、またちらちら降り添ってくる雪の空を眺めている。近くに咲く紅梅の梢に、鶯が初々しい声で鳴いているのを聞いて、
<折りつれば袖こそ匂へ梅の花>
と口ずさみ、花を袖で押し隠して御簾を押し上げて外を見ている姿は、どう見ても夢にも中納言や女御という子まである高い身分の人とは思えず、ひたすら若く瑞々しいのだった。
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