若菜 その二十七

「まして、女三の宮にすっかり頼り切られて結婚生活をすることはかえってよくないと思う。朱雀院に引き続いてこの私が死ぬ時は、女三の宮があまりにもおいたわしいし、私自身にとっても女三の宮のことが気掛かりで、往生の障りになるだろう。夕霧の中納言などはまだ若年で身分も軽いけれど、将来は長いことだし、人柄もやがては朝廷の後見となる可能性があるから、婿にとお考えくださっても何の不都合があろう。しかしあれはまったく実直一方な上に、もう好きな女と結婚してしまっているので、朱雀院は気がねなさったのだろうか」



 などと、自分はまったくその気持ちがないような口ぶりなので、左中弁は朱雀院は決していい加減な気持ちで決めたことではないのに、こんなふうに言われて気の毒にも残念にも思っている。朱雀院がどんなふうに内々に迷ったあげくの果ての気持ちかということを、改めて詳しく話すのだった。

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