若菜 その二十六

 まず女三の宮の乳母の兄の左中弁を使者にして、とりあえず朱雀院の意向を六条の院へ伝えた。


 光源氏は女三の宮の結婚の件で朱雀院がこんなにも心痛していることはかねがね聞き及んでいたので、



「お気の毒な事だね。しかしそうはいっても、朱雀院の寿命がそう長くはないとしても、私だって朱雀院よりどれほど長く生き残れるかしれたものではない。そんな私がどうして女三の宮の後見をお引き受けできようか。まあ年の順に従って朱雀院より少しばかり私が長生きするとすれば、朱雀院の皇女たちはどのお方のことももちろん他人扱いに捨てておくわけにはないし、とりわけてこのように心配なさる女三の宮のことは、特に心をこめてお世話申し上げようと思う。しかしそれだって老少不定の無常の世の中のことだもの、どうなるものやら」



 と言うのだった。

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