若菜 その二十五

 東宮もこうしたことを聞き、



「差し当たっての目先のことはともかく、こうしたことは後世の先例にもなることですから、よくよくお考えになった上でお決めになるべきだと思います。いくら人柄が悪くないと言っても、臣下は何といっても臣下に過ぎないのですから、やはり女三の宮の縁組みをお考えになるなら、あの六条の院の光源氏に親代わりとしてお託しになるのがよろしいでしょう」



 と、わざわざ改まっての消息という形ではなく、それとなく意向を進言したのを、朱雀院は待ちかねていたように聞き、



「いかにももっともだ。ほんとうによい忠告をしてくださった」



 と言い、いよいよ決心をするのだった。

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