若菜 その二十四
けれども雲居の雁が今ではすっかり安心しきって、頼り切っていられるのを見ると、
「長い年月、辛い仕打ちをされていたのを口実に浮気のできた時期でさえ、ほかの女に心を動かしたこともなく過ごしてきたのに、生憎なことに今頃になって分別もなく昔に返って急に雲居の雁に苦労をさせてよいものか。内親王といった並々ならぬ高貴のお方と関わり合いになったなら、何一つ自分の思うままにならず、二人のどちらに対しても気ばかり遣って苦しまねばならないだろう」
などと考える。もともと浮気な性質ではないので、気持ちを抑えなだめて、口には出さないものの、女三の宮が他の男との縁組みが決定するというのも平静ではいられないだろうと気になって、噂に耳をそばだてているのだった。
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