若菜 その十八

 朱雀院は、



「私もそのようにあれこれ考え迷っている。世間の目には、皇女たちが結婚しているのは、見苦しく軽薄な感じもするし、またいくら高貴な身分でも女は所詮男と結婚することによって後悔することも、腹立たしい思いも自然に味わわなければならないだろう。そう思うと一方にはそれが可哀そうで心を痛めているのだ。また一方では後見してくれる親などに先立たれて、頼みとする庇護者たちもいなくなった後に、自分の思い通りに世の中を送ることになっても、昔は人心が穏やかで、男も世間に許されないような身分違いの恋などは高根の花とあきらめるのが習わしだったようだが、今の世間では好色がましい風紀のよくないことも、女の話題に関連して折に触れて聞こえてくるようだ。昨日まで高貴の親の家で崇められ大切にされてきた娘が、今日はたいした取り柄もない身分の賤しい浮気男たちにだまされて浮き名を立てられ、亡くなった親の顔をつぶし、死後の霊魂に恥をかかせる例がたくさん耳に入ってくる。それも煎じ詰めれば結婚しようがしまいが結局は心配は皆同じことになる」

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