若菜 その十七

「この御縁談について兄の左中弁にほのめかしたところ、



『光源氏様はきっと御承諾なさるだろう。高貴の身分の北の方をと年来の希望が叶うとお喜びになることですから、こちらの院のお許しが本当に頂けるようでしたら、この話をお取次ぎいたします』



 と申しております。どう返事をしたらよろしゅうございましょう。光源氏様は女君の御身分に応じて、それぞれお立場にふさわしいまたとない行き届いた御待遇をなさるようですが、普通の身分の女でも、自分のほかに同じように御寵愛を受ける女が肩を並べますのは、誰でも不服に思うようですから、姫宮にとっては心外だと惑われることもないとは限りません。女三の宮とのご結婚を望まれる方々は、他にもたくさんいらっしゃいましょう。どうかよくよく御考慮の上、お決めなられるのがよろしいかと存じます。高貴の姫宮と申しましても、当節の風といたしましては、どなたも明るく朗らかで、お好きなように合理的に振舞われて、夫婦の仲を思い通りにしてお過ごしなられる方もおいでのようでございます。けれども女三の宮は、ただもう呆れるほど頼りない感じで、気掛かりにお見受けいたしますので、御奉公の女房たちがお仕えするにしましても、立場の限度がございます。ご主人のだいたいのご方針に従って気の利く下々の者たちも従順にお仕えしているのが、心丈夫というものでございましょう。格別の頼もしい御後見もいらっしゃらないのは、やはり心細いことでございましょう」



 と言うのだった。

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