若菜 その十

 女房などは几帳の隙から夕霧を覗き見して、



「まあ、なんとすてきなこと。またとはない器量や物腰でいらっしゃるのね」


「ほんとうにご立派なこと」



 など、集まって噂しているのを、年寄りのぼけた古女房は、



「いやいや、そう言っても、光源氏様がこれくらいの若さだった時の御様子とは、とてもくらべものになりませんわ。ほんとうにあの方は目もまばゆいくらいにお綺麗でいらっしゃいましたもの」



 などと言い争っているのを朱雀院は聞いていたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る