若菜 その九
夕霧はまだ二十歳にも足りないくらいの若さだが、すっかり整っていて器量も今を盛りに色艶が輝くようで、とても綺麗なのに朱雀院は目を留めている。今その処置に悩んでいる女三の宮の結婚相手に、この人物はどうかなど、心の中で人知れず考えている。
「近頃は太政大臣の姫と縁談が整って、すっかりそちらに住み着かれたそうだね。ここ数年、何か納得のいかないような故障の話を聞いて、気の毒に思っていたが、結婚の噂を聞いて一安心した。しかし一方やはり少々妬ましい気もして、残念にも思っている」
と言う表情を夕霧はいったいどういうつもりで言うのかと、不審に思いあれこれと考えめぐらす。朱雀院が女三の宮の身の上をいろいろ心配して、困った末に「婿として適当な人がいれば女三の宮を託して心置きなく出離したい」と考え、口にもしたのを漏れ聞いた機会もあったので、そのことを言っているのかと夕霧は気づいた。しかし、どうしてすぐ呑み込み顔に返事ができるだろうか。ただ、
「私のように頼りない者には、なかなかいい縁も見つかりかねまして」
とだけ言うにとどめたのだった。
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