若菜 その十一

「まったくあの方はご様子が世にもまれなすばらしいお人だった。今はまたあの頃よりいっそう老成して立派になり、光るとはこのようなことを言うのかと思われるほど、匂やかな美しさが加わっていらっしゃる。威儀を正して公務に携わっていらっしゃる点から見ると、凛とした端麗さに目もくらみそうな感じがするが、一方、くつろいで冗談を言ったりふざけたりなさる時には、並々でない愛嬌があふれるようで、そういった方面でも人懐っこく惹きつけられる気がする点では、肩を並べられる者もまったくなかったほどだった。何事にも前世の果報が推し量られる、世にも珍しいお人柄だった。幼い時から宮中でお育ちになられ、桐壺帝から限りなく可愛がられて、まるで撫でるように大切にされ、帝はご自分の御身に変えてもとまで御寵愛していらっしゃった。それでも光源氏は調子に乗って驕ったりせず、へりくだって二十になるまでは中納言にもならなかったものだ。


 確か二十一の年に宰相で大将を兼ねられたのではなかっただろうか。それに比べて夕霧の中納言がずっと早く昇進しているのは、親から子へと世の羨望がだんだん高くなっていくものらしい。確かに政治向きの学識とか心構えなどは、夕霧もほとんど光源氏に劣りそうでもなく、たとえその見方が誤っていたとしても、益々貫禄がついてきたという評判は何としても格別のようだね」



 などと褒めるのだった。

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