　さて、明石の姫君の入内には母北の方が付き添うのが慣例だったが、紫の上は長く側に付き添うこともできないだろうし、こうした機会に生母の明石の君を後見として付き従わせようかと光源氏は考える。紫の上も、

「結局は一緒にお暮しになられるのが当然なのに、今のように親子別れ別れに暮らしていらっしゃるのを明石の君も内心ではひどい仕打ちだと嘆いていらっしゃるだろうし、明石の姫君のお気持ちとしても成人なさった今では次第に生みの母が気掛かりになっていらっしゃるに違いない。お二人からそれぞれわだかまりを持たれているとしたらつまらないことだ」

　と思い、

「この機会に明石の君を付き従わせておあげなさいまし。まだ明石の姫君はとても幼くか弱いお年頃なのも心配ですのに、お仕えしている女房たちにしても、若くて気の付かない者ばかりが多いのです。乳母たちにしましても、気を付けたところでなかなか行き届きかねます。だからといって私はいつもいつもお側に付いていられるわけでもなし、そんな時にも、あの方なら安心できましょう」

　と言うのだった。