藤裏葉 その二十七

 折を外さず手紙をもらっただけなのに、藤の典侍はどう感じたのだろうか。車に乗ろうとするあわただしい時だったのに、




 かざしてもかつたどらるる草の名は

 桂を折りし人や知るらむ




「あなたのような学者でなければわかりませんわ」



 と返事をした。何ということもない歌とは言いながら、してやられたなと夕霧は思う。やはりこの藤の典侍からは心が離れず、これからもこっそり逢うことになるだろう。

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