藤裏葉 その十九

 内大臣は笑って、



「字もたいそうお上手になられたものだ」



 などと言うのも、昔の意地の悪かった名残はまったくない。雲居の雁の返事がなかなか書けそうもないので、



「だらしがない」



 と内大臣は言いながら、自分の前では書きにくいのも当然だと思い、出ていった。


 使いの祝儀には特別の品々を与えた。柏木の中将が使いたちを気の利いたふうにもてなす。いつも夕霧の手紙をひそかに運んでいた使いも、今日は顔つきまでいっぱしの者のように得意気に振舞っているようだ。右近の将監という者で夕霧が気を許して召し使っている者だった。


 六条の院の光源氏も昨夜のことの次第をすっかり聞いた。夕霧がいつもより美しさの輝く表情で参上したので、つくづく見るのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る