藤裏葉 その十六
夕霧は夢ではないかと思うにつけてもここまでよくも辛抱し、婿として認めさせた自分をたいしたものだと誇らしく思ったことだろう。
雲居の雁は本当に心の底から恥ずかしく思っている。前よりずっと女らしく成長したその容姿はいよいよ何の不足もない美しさだ。夕霧は、
「恋死にして、世間の噂の種にもなりかねなかった私を内大臣はあわれとお思いになってこうまで心を解いて二人の仲をお許しくださったのでしょう。それなのに、あなたはそんな私の気持ちをわかってくださらないとは、ずいぶんひどい態度ですよ」
と恨み言を言う。
「弁の少将が謡った『葦垣』の歌の心はおわかりでしたか。あの人はひどいですね。『河口』の関の荒垣をいくら守ったって抜け出して二人はとうに逢ってしまっていたという歌で、やり返してやりたかった」
と言うのだった。
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