藤裏葉 その十五
内大臣は、
「朝臣よ、寝所の用意をしなさい。この年寄りはひどく酔っ払って失礼ですから引っ込みますよ」
と言い捨てて内に入った。柏木の中将は、
「花の陰の一夜の旅寝ですね。どうしたものでしょう。私は苦しい案内役ですね」
と言うと、夕霧は、
「常盤の松に契りを結ぶのが浮気な花なものですか。縁起でもないことをおっしゃる」
と咎める。柏木は心中ではしてやられたと思っているが、夕霧の人柄が非の打ちどころもなく立派なので、どうせこういう結果になればよいとかねがね心の中で二人に味方していたものだから、今は安心して雲居の雁の寝所へ案内するのだった。
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