藤裏葉 その十
内大臣は夕霧の座席を整えさせるなど、気遣いすること一通りではない。
改めて冠をつけ、用意された席に出ようとして、北の方や若い女房たちに、
「覗いてごらん。まったくあの方は年をとるにつれてますます立派になってゆかれる。態度などもいかにも落ち着いて堂々としている。目覚ましく群を抜いて大人びてゆく点では父光源氏の大臣よりも優っているくらいだろう。光源氏はただもうひたすら優雅で愛嬌にあふれていて、お顔をみただけでつい微笑ましくなるように魅力的でこの世の憂さも忘れるような気持ちにさせられてしまう。政治家としては少し厳格さに欠け、洒脱でくだけすぎたきらいがおありだが、それもあの人のお人柄からすれば当然だ。それに比べるとこの夕霧は、学才も秀でていて、性格も男らしく、しっかりしていて、申し分がないと世間でも評判のようだ」
などと言ってから会う。儀式ばったしかつめらしい挨拶は少しだけとして、花見の宴に移るのだった。
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