藤裏葉 その九

 光源氏は、



「その直衣は色があまり赤みが濃すぎて軽々しく見えるだろう。非参議の人とか、これという役もつかない若者なら二藍でもいいだろうが、あなたはもう宰相なのだから、もっと着飾ったほうがいいだろう」



 と言い、自分用の着物の中でも特に立派な直衣に極上の下着を何枚も添えてお供に持たせてやった。


 夕霧は自分の部屋でとても念入りに化粧を凝らして黄昏時も過ぎ、先方が気をもんで待ちかねている頃に来た。


 内大臣の子息たちは、柏木の中将をはじめ七、八人が連れ立って出迎え、案内する。その人々は誰もがいい器量揃いだが、夕霧はやはりその人々よりもとりわけ秀でて水際立って美しく魅力的であるばかりではなく、やさしく優雅で侵しがたい気品があるのだった。

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