藤裏葉
藤裏葉 その一
明石の姫君の入内の支度で忙しいさなかにも、夕霧の中将は物思いに沈みがちで、心も空にぼんやりとしていることが多く、一方では不思議に、我ながら何と執念深いことかと思う。こんなにもひたむきに雲居の雁は恋しくてならないのなら、今では関守のように二人の仲を邪魔していた内大臣もこの頃では気が折れて許してくれそうだという噂もあるし、
「どうせ同じことならもう少し我慢して世間の手前もみっともなくないよう、最後まで意地を通そう」
と辛さに耐えているのも苦しく、あれこれ思い悩んでいる。
雲居の雁のほうでも、父内大臣がふと洩らした他の姫君との縁談の噂を聞いてからは、
「もしそれが本当なら、私のことなどは何の未練もなく忘れてしまわれるだろう」
と悲しくてならないのだった。
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