藤裏葉 その二
妙にこの二人は互いに背を向けあったまま、それでもやはり恋しがっている相思相愛の仲なのだった。
内大臣も、あんなに強気でいたが、事がうまく運ばないのに思いあぐねて、
「中務の宮家でも夕霧の中将を婿にと決めてしまったのなら、こちらではまた誰彼と改めて婿選びをすることとなると、相手の人にも気の毒なことだし、こちらとしても世間のもの笑いになって自然に何かと軽蔑されるようなことが起こるだろう。内輪の過失だって、いくら隠しても世間に漏れて広まっていることだろう。何とかうまく取り繕って、やはりここはこちらから折れて出なければなるまい」
という気持ちになった。
表面はさりげなく振舞っていたが、内心ではお互い恨みが消えないので、だしぬけに話を持ち掛けるのもどうかと、内大臣は遠慮して、
「そうかといってこちらから改まって申し込むのも、世間から馬鹿にされるだろうし、いったいどんな機会にそれとなく話せばよいものか」
などと考えるのだった。
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