梅枝 その三十二
こっそり雲居の雁に、
「こんなうわさを聞きましたよ。夕霧の中将とはなんという冷たい心の人か。光源氏の大臣がお口添えをなさったのに、こちらが強情にお言葉に従わなかったというので、無理に縁談を他に持っていかれるのだろう。今更、弱気になってこちらから下手に出れば、またもの笑いになることだろうし」
など涙を浮かべて話す。雲居の雁は心から恥ずかしく思うにつけても、何となく涙がこぼれるので、みっともないと思って顔を背けている。その様子がとても可愛らしかった。
「どうしたものか、やはりこちらから進んで話して、先方の意向を聞いてみようか」
などと、内大臣は思い迷って出ていった。雲居の雁はそのまま端近に座って、ぼんやりと物思いに沈んでいる。
「どうしてかしら、ひとりでに涙があふれてくる。父君はこの涙をどうお思いになったでしょう」
など、あれこれ思い悩んでいる時に、夕霧の中将から手紙が届いたのだった。
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