梅枝 その三十一
こうした光源氏の教訓に従って、夕霧の中将は冗談にもせよ他の女に心を寄せたりするのは、雲居の雁の姫君が可哀そうだと人から言われるまでもなく思っている。
雲居の雁もいつもにまして内大臣がこの頃嘆いて沈んでいる様子に恥ずかしくて、何と言う情けない身の上だろうと悲しみ沈んでいる。それでもうわべはさりげなくおっとりと見せて、その実悩み暮らしているのだった。
夕霧の中将は、思いあまる折々に、深い思いのたけを込めた心打つ手紙を書いて寄こす。雲居の雁はどうせ<誰がまことをか>の古歌のように、この人を信じていいのかしらと思いながらも、これが恋馴れた人ならむやみに相手の心を疑うものだろうが、この雲居の雁は夕霧の中将の手紙にしみじみ胸を打たれて見ることが多いのだった。
「中務の宮は、光源氏の大臣にも承認を得て姫君と夕霧の中将との縁談をまとめようとお考えだそうです」
と女房が言ったので、内大臣はまた改めて胸がつぶれそうになるのだった。
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