梅枝 その二十三

「兵部卿の宮がお越しになりました」



 と女房が言ったので、光源氏は驚いてすぐに直衣を着て座布団をもう一つ取り寄せてそのままそこへ兵部卿の宮を招き入れる。


 この兵部卿の宮もとても美しく、寝殿の南の階段を見るからに恰好よく上ってくる。御簾の中でも女房たちがその姿を覗き見ている。


 改まって二人が礼儀正しく挨拶する様子も、この上もない美しさだった。光源氏は、



「所在なく引きこもっていて、溜まらないほど退屈しきっておりました。よい折にようこそお越しくださいました」



 と歓迎する。兵部卿の宮は先日光源氏に依頼された草子を供人に持たせて来たのだった。その場で早速見ると、たいして能筆というほどでもないのだが、とてもすっきり垢抜けた感じに書きこなしている。そこが兵部卿の宮の筆の長所なのだろう。歌も平凡なのはさけて、ことさらに変わった技巧の古歌ばかりを選び、一首を三行ほどにほとんど仮名で形よく書いているのだった。

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