梅枝 その二十二
前の香競べの時のように、光源氏は今度もいつもの寝殿に一人離れてひそかに書く。
桜の花盛りが過ぎて浅緑の空がうららかに晴れているので、古歌などを静かに思案して満足いくまで草仮名の字も普通の字も女手の仮名もこの上なく見事に存分に書くのだった。側にも人少なで、女房二、三人に墨を磨らせている。由緒ある古い歌集の歌など、これはどうだろうかと、選び出すのに相談相手に馴れそうな女房だけが控えている。
御簾をすっかり上げて、脇息の上に草子を置き、部屋の端近なところにくつろいだ姿で筆の端をくわえてあれこれ考えている様子はいつまで見ていても見飽きないほどの美しさだ。白や赤などの紙は墨色がはっきり目立つので筆を取り直し、改まって注意しながら書く。その姿まで見る目のある人ならほんとうにすばらしいと感嘆せずにはいられないだろう。
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