梅枝 その二十四

 光源氏はこれを見てびっくりした。



「これほどお上手とは存じませんでした。私などはもう筆を折ってしまわなければ」



 と口惜しがっている。兵部卿の宮は、



「こうしたお上手なお歴々の中に混じって、臆面もなく書くのですから、私もこれで相当なつもりですよ」



 などと冗談を言うのだった。


 光源氏の書いた草子も隠しているわけにもいかないので取り出して、互いが見る。唐の紙のひどくごわごわしたのに草仮名を書いたのがひときわすばらしいと兵部卿の宮は見るのだが、また高麗の紙できめ細かでやさしくあたたかな感じの色も地味めでしっとりと上品なものにおおらかな感じで平仮名を端正に心を込めて書いているのも、たとえようもなくすばらしく見えるのだった。

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