梅枝 その十四

 弁の少将が、




 霞だに月と花とをへだてずは

 ねぐらの鳥もほころびなまし




 と詠んだ。


 兵部卿の宮は、ほんとうに明け方までいて帰っていった。兵部卿の宮への贈り物に光源氏は自分用の直衣一揃いにまだ開けていない薫物二壺を添えて車まで届けた。


 兵部卿の宮は、




 花の香をえならぬ袖にうつしもて

 ことあやまりと妹やとがめむ




 と言うので、光源氏は、



「それはまたひどく弱気ですね」



 と笑うのだった。

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