梅枝 その九

 「侍従」では光源氏の調合したのが一際優雅で優しい薫りだと判定する。


 紫の上の薫物は三種類ある中で特に「梅花」がはなやかで現代風で、心持ち鋭い感じの匂いもするような工夫がされていて、これまでいない新鮮な薫りが加わっている。



「ちょうど今頃の、春風に匂わせるには、これにまさるものはありません」



 と、兵部卿の宮は褒めた。


 夏の御方、花散里の君は人々がこうして思い思いに競争する中で、そう数多く出すこともないだろうと、人並みに煙を立てることまでも遠慮して、ただ夏の香の「荷葉」を一種だけ調合した。それが趣の変わったしめやかな香りで、胸にしみいるようにやさしい感じがするのだった。

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