真木柱 その六十三
髭黒の大将のもと北の方は、月日の経つにつれて、あまりにも情けないことの成り行きに、すっかり気持ちもふさぎこみ、ますます正気を失い呆けたようになっている。
髭黒の大将のほうでは、一通りのお世話は今でも何かにつけ、こまごまと気をつけており、男の子供たちは、前と変わらず大切に可愛がっているので、北の方はすっかり縁を切るでもなく、経済面では依然と同じように頼りにしている。
真木柱の姫君を、髭黒の大将はたまらなく恋しがっているのだが、式部卿の宮のほうではあれっきり会わせていない。
式部卿の宮家では誰も彼も髭黒の大将を許さず恨み続け、ますます親子の仲を隔てるようにばかりするので、真木柱は髭黒の大将を、幼い心のうちに心細く悲しく慕っている。弟の男君たちはいつも髭黒の大将の邸に会いに行って、玉鬘の噂なども、何かにつけて自然真木柱に言う。
「私たちをもとても可愛がってやさしくしてくださいます。風流なことが好きで、一日中色々楽しく暮らしていらっしゃいますよ」
など話すので真木柱はうらやましくて、こういうふうに自由に振舞える男にどうして生まれてこなかっただろうと、嘆いている。ほんとうにどうしたわけだろうか。男にも女にも、人に物思いをさせる玉鬘だった。
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