真木柱 その四十六

 髭黒の大将は宮中の宿直所に一日中詰めて、玉鬘に便りを送ることといえば、



「夜になったら暇をいただいて帰りましょう。こうした機会にこのまま宮中に住み着こうなどと、心が変わるかもしれない宮仕えは、心配でならないから」



 とばかり、同じことを催促するが、玉鬘は返事もしない。お付きの女房たちが、



「光源氏の大臣がそう気忙しくすぐ退出なさらないで、たまさかの出仕なのだから、帝が満足あそばすまでお留まりになって、お許しがあってから退出なさるようにと、おっしゃいましたから、今夜退出とは、あまりにあっさりしすぎるようですが」



 と言うので、髭黒の大将はたまらなく苦しい思いで聞き、



「あれほど申し上げておいたのに、何と思うようにならぬ夫婦の仲か」



 とがっかりして嘆いているのだった。

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