真木柱 その四十

 式部卿の宮にも会いたい旨をお願いしたが、



「風邪をひいて、静養しておりますので」



 と言うので、取り付く島もなく帰った。


 幼い男君二人を車に乗せて、道々話す。六条の院の玉鬘のところには連れて行けないので、邸に残して、



「やはりここにいなさい、会いに来るにも気がねないから」



 と言う。兄弟が悲しそうに沈んだ表情で、心細そうに、じっと髭黒の大将を見送っていた様子が、とても可哀そうなので、心配の種がまた一つ増えた思いがする。それでも玉鬘の容姿のいかにも見栄えする美しさとすばらしさが、物の怪に憑りつかれた異様な北の方とは比べ物にもならないので、何もかもすべて慰められるのだった。


 その後、髭黒の大将は、北の方にはぱったり便りも出さず、先頃、引っ込みがつかず、決まりの悪い思いをさせられたことにかこつけて、ますますご無沙汰を決め込んでいるようなのを、式部卿の宮ははなはだ不埒な仕打ちだと嘆くのだった。

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