真木柱 その三十九

 髭黒の大将は、



「あまりに大人げないことをなさるものです。まさか捨てられるはずもない子供たちもいることだしと、のんびり構えていた私の怠慢は、返す返すお詫びの申し上げようもありません。今はただ穏便に、大目にお見逃しくださって、ただただ、私が悪い、弁解の余地もないと、世間が認めてから、こういう処置をおとりになるのがいいと思いますが」



 など、言い訳に苦心している。



「姫君だけにでも会わせてください」



 と言っていたが、式部卿の宮家では姫君を出すこともしない。


 十歳になる男君は、童殿上している。とても可愛らしく、人の受けもよくて、顔立ちはそれほどでもないが、なかなか利口で気が利いて、だんだんものもわかってきている。


 次男の君は八歳ぐらいで、とてもいじらしく、姫君にも似ているので、髭黒の大将はこの子の頭を撫でながら、



「これからはお前を、姉君の形見と思うことにしようね」


 などと泣きながら話すのだった。

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