真木柱 その十七

 北の方は、



「あなたの情ないお仕打ちなどは、どうこう思っておりません。人並みでない私の困った病気を、父宮も悲しまれて、今更別れ話になっては人の笑いの種だと、心労で悩んでいらっしゃるようですから、お気の毒で、里に帰ってもどうして今更お目にかかれようかと思います。光源氏様の北の方の紫の上も、私の異母姉妹で他人ではいらっしゃらないのです。あの人は私の知らないところで成人されましたが、あとになって玉鬘の母親顔をして、面倒を見ていらっしゃるのがけしからんと、父宮は恨んでいらっしゃるようです。けれども、私は別にどうこうと気にもしていません。ただ、あなたのなさることを見ているだけですわ」



 と言う。



「ずいぶんとものわかりのいいようなことをおっしゃるが、いつもの病気が始まると、困ったことも起こるでしょう。玉鬘のことは、まったく紫の上の承知のことではないのです。あの人は光源氏様に、秘蔵の娘のように大切にされてらっしゃるので、こんなふうに蔑まれている玉鬘の身の上までご存知なものですか。あの紫の上は人の親らしいところなどない人のようです。それなのに、こんなうわさがお耳に入ったら、ほんとうにとんだことになりますよ」



 など、終日北の方の部屋にいて、いろいろと話し慰めているのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る