行幸 その二十八

 光源氏は、



「それでは、大宮の病気もお悪くはないように見えますから、前に申し上げた裳着の日に、きっと間違いなくおいでくださるように」



 と、約束した。


 二人とも機嫌よく、それぞれ帰る。そのお供廻りの人や車の物音のざわめきが、物々しく威風堂々としていた。お供の公達は、



「何があったのだろう。滅多にない対面に二人ともすっかりご満悦の様子だったのは。また、何か光源氏様から位などのお譲りがあるのだろうか」



 などと見当はずれな勝手な想像をしている。まさか玉鬘の話などとは誰も思いもよらないのだった。

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